Audio Stop 224
French 12th Century (mounting); Alexandrian 2nd/1st Century B.C.(cup)
Chalice of the Abbot Suger of Saint-Denis, 2nd/1st century B.C. (cup); 1137-1140 (mounting)
West Building, Ground Floor — Gallery G18
文字起こし
サン=ドニ修道院院長シュジェールの聖杯、紀元前2世紀/1世紀、1137-1140年
アリソン・ルクス:
当館の初期ヨーロッパ彫刻部門の学芸員、アリソン・ルクスです。
この聖杯からは、素晴らしい躍動感が感じられます。それは、はめ込まれた石や、全体を覆い、ワイヤーと溝彫りで分割された渦巻き模様から作り出されたもので、金細工を施した表面を覆っています。
ナレーター:
この聖杯は、約1000年前にフランスで制作されました。手掛けたのは、パリ郊外にあるカトリックのサン=ドニ王立修道院院長のために働いていた熟練職人たちでした。彼らは古代の石の杯を元に、制作を開始しました。
アリソン・ルクス:
石の杯は古代エジプトで、紀元前1世紀か2世紀頃、つまりクレオパトラよりちょっと前の時代に制作されたと考えられています。そのことは、筋の模様入りの美しい石が、神聖な力や生命力を持つと信じられていたことを示しています。
ナレーター:
職人たちは石を銀で覆い、宝石で装飾して、金の針金の線条細工で渦巻き模様を作り出しました。
教会の祭壇の上に置かれた聖杯には、神父によって聖別されたぶどう酒が注がれたでしょう。ゴシック様式の教会では、尖ったアーチやステンドグラスの窓から、色とりどりの光が差し込んだに違いありません。そうした特徴はこの聖杯にも見て取ることができます。
アリソン・ルクス:
聖杯が教会と共有しているのは、その形というよりも、神聖さを象徴し、人々を神に近づける、光が持つ力への信仰です。