Audio Stop 16
Alberto Giacometti
No More Play, 1931-1932
East Building, Upper Level — Gallery 415-B
シュルレアリスムの偉大な彫刻家の一人であるアルベルト・ジャコメッティは、活動初期にこの作品のようなゲームや遊びのテーマを頻繁に題材にしていました。ジャコメッティがこの作品で使用した形は、駒を動かして遊ぶボードゲームに似ていますが、そのゲームがどんなものなのかははっきりしません。曖昧な空間と、作品名の《ノー・モア・プレイ》で表現されている知るよしのない「ゲーム」のルールは、作品をまるで夢の中に出てくるようなものに感じさせます。
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HARRY COOPER:
この作品はジャコメッティの傑作の一つです。この作品が変わっている点は、平置きで上から見るようになっているということです。通常の彫刻作品とは一線を画しており、どちらかというとゲームボードのようです。
NARRATOR:
近代絵画部部長兼キュレーターのハリー・クーパーです。
HARRY COOPER:
他にふさわしいタイトルがあったとすれば≪遊ぼう≫でしょう。作品はいくつかの動く要素で構成されているからです。しかし作品のタイトルは≪遊びは終わり≫。そこには暗さが感じられます。ここには穴や蓋、棺があります。ボードから人物が小さな記念碑のように飛び出しています。最もはっきりと暗示されているのは、死や、何かの終わり、遊びの終わりでしょう。
NARRATOR:
すぐ隣の、ジャコメッティのもう一つの作品≪見えないもの:空(くう)を持つ手≫をご覧ください。そこには同じような不安や拘束が感じられます… この作品については、当時亡くなったばかりの父親の死から、エジブト美術の埋葬文化まで、さまざまな関連性が指摘されています。
HARRY COOPER:
私たちはこのボードの上でどのようなやりとりが繰り広げられているのか、またまっすぐに立ち、空を持つこの人物が何をしているかは、はっきりと分かりません。宇宙人が全く異なる世界から私たちに何かを伝えようとしているかのようです。謎だらけのこれらの彫刻作品を解釈するのに、これは案外ふさわしい考え方かもしれません。