Audio Stop 14
Ernst Ludwig Kirchner
Two Girls under an Umbrella, 1910
East Building, Mezzanine — Gallery 217-A
この作品は多くの作品を残したエルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナーの初期の作品です。彼は1905年にドレスデンで結成された、ドイツ語で「橋」を意味するブリュッケと呼ばれるドイツ表現主義グループの結成メンバーでした。この作品でキルヒナーは、従来のアトリエの不自然な空間ではなく、自然を背景に二人の裸婦を描いています。作品は、キルヒナーの大胆で、往々にして荒々しい形や鮮やかな色使いの典型を示しています。
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HARRY COOPER:
2人の女性が散歩をしています … でもいったい何をしているのでしょう? [笑い声]なぜ裸なのでしょうか?
NARRATOR:
エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナーによるこの2人の女性の肖像画は、ドイツ表現主義として知られる典型的な様式を示しています。キルヒナーはこの20世紀初めに登場した芸術運動の共同創始者でした。彼らは勢いのある筆遣いと明るい色調、そしてデフォルメされた人物などでカンヴァスを埋め尽くしました。キルヒナーと彼の仲間達が活動を開始したのは、工業化や戦争の脅威、社会悪など、世の中が急速に変化を遂げていた時代でした。彼らはドレスデンやベルリンなどの都市に魅了されていましたが、同時に原始文化や自然への回帰にも傾倒していました。
近代絵画部部長兼キュレーターのハリー・クーパーが、この新しい手法についてのキルヒナー自身のコメントを紹介します。
HARRY COOPER:
「未来を担っている私たちは、旧態依然とした古い体制に対抗し、自分たちのために生活と運動の自由を創出したいのです。創造力を刺激するものを率直に、そして心から伝えようとする人はすべて、われわれとともにあります」とキルヒナーは語っています。この中で鍵となるのが「自由」という言葉です。この作品では、キルヒナーがルールや伝統を打ち壊そうとしていたことが分かります。一見控えめな題材のうわべをはぎ、文字通り服をはいだ裸の人物を、強烈な色調や質感の風景の中に描いたのです。
NARRATOR:
作品をよく見ると、右側の女性が古い習慣の名残である帽子をかぶっているのが分かります。
HARRY COOPER:
つまりある意味、彼らは時代の間に取り残されているのです。自分たちの行動を縛るたくさんの規範から開放された人生がどういうものかという、一種のヨーロッパの幻想とも言えるでしょう。