Audio Stop 11
Pablo Picasso
Family of Saltimbanques, 1905
East Building, Mezzanine — Gallery 217-C
《サルタンバンクの家族》は、ピカソの初期の作品の中で最も重要な作品です。ピカソは、これらのさすらいの曲芸師や踊り子、道化師などのサルタンバンクたちに、世間から見捨てられ社会の底辺に生きるアーティストたちの悲哀を重ね合わせ、自らをある種の同類と感じていたのです。スペイン生まれのピカソは、パリに移り住んだ最初の数年間、彼ら同様に貧しい生活を送りながら、世間から認められることを目指していました。一番左に描かれた菱形模様の衣装を着た陰気な道化師は、若い頃のピカソの浅黒く真剣な顔をしています。
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NARRATOR:
1904年後半から1906年のはじめにかけて、パブロ・ピカソは同じ主題でいくつも作品を制作しました。その主題とは各地を巡業するサーカスの曲芸師などの大道芸人でした。近代絵画部部長のハリー・クーパーは、ピカソは主題と非常に共感し、自分の姿を作品に描いたと解説します。
HARRY COOPER:
左側に立っている背の高い若者が彼の自画像です。前衛芸術家の多くが、発展するパリの郊外をさすらっていた、社会の底辺に生きる人々と自分たちを重ね合わせていました。このため、作品の中の風景も彼らの居場所のなさを反映しています。
NARRATOR:
作品のタイトルからこの曲芸師たちは家族だと思われますが、彼らはまったく気持ちが離れ離れのように見えます。
HARRY COOPER:
落ちくぼんだ目で別の方角を見ている者がいるだけでなく、皆ほとんど無表情です。しかし、彼らの体をかろうじてつなげているしぐさに、作品の物語を読み取ることができます。ここに描かれている手や足は、昔ながらの物語の伝え方より重要とさえ言えるかもしれません。
NARRATOR:
ピカソは人物を追加したり構図を変えたりと、何度か作品を描き直し、ところによって画風が大きく異なっています。
HARRY COOPER:
この作品では、背景、特に空の描写が最も表現豊かで、また最も抽象的な部分になっています。最上層の絵具が非常に薄く塗られているかと思うと、明らかに修正されたと思われる、厚く塗られている部分もあります。作品には一貫性や一体感がなく、それはこの作品を非常に興味深く急進的なものにしている一つの要素となっています。